私が新卒入社で社会人になった会社の上司

私が新卒入社で社会人になった会社の上司は43歳の男性でした。アパレル関係の会社ということもあり、お洒落な人が多い職場でしたが、その上司は180cmを超える身長で、大きくて優しいたれ目、少し白髪混じりの清潔感のある髪型で、一際お洒落さを感じる人でした。家族は奥様と中学生の子ども2人。よく家族の話も口にする、家族想いの包容力のある男性でした。

新卒(私)の失敗でお客様がご立腹

社会人1年目の私はあらゆることが初めてで、お客様との話し方から始まり、商品知識や販売手続きなど、教わったり自分で勉強しては即実行、を繰り返して毎日一生懸命過ごしていました。

ある日、お店に展示されていた商品について、お客様が「新しいものはありますか?」と尋ねました。すぐに在庫を確認するとあいにく品切れ、メーカーにも新品を届けてもらえるか確認したところ「現在品切れで、次の入荷予定がいつになるかわからない」と言われました。

私はお客様に「新しいものは今なく、次いつ生産するか分かりません」と伝えました。するとお客様はしばらく考えた挙句「もう同じ商品が作られるかわからないんですね?」と私に聞き、私は「はい」と答えました。お客様はその商品を買って帰りました。2週間ほど経ったあと、あのお客様が購入した商品が数点入荷してきました。私は何も気にせずいつも通りお店に展示しました。

その数日後、以前購入してくれたあのお客様がまた来店してくれました。私は「あ、このお客様はこのお店によく来てくださる方なんだ」とその時認識しました。「先日はありがとうございます」と挨拶したところ、お客様は不機嫌そうな顔で言いました。「私がついこの前購入した商品は、もう生産されるかわからなかったんじゃありませんでしたか。どうして今お店に飾られているんですか。私は展示されている商品でなく、新品が欲しかったんです。もし少し待てば入荷する可能性があったのなら、そう言って欲しかった。」と。

私は衝撃を受けました。私がメーカーから確認したことについて、私自身も認識が足りなかったし、お客様のご意向を組めずに配慮も足りなかった。お客様は怒っている。どうしよう。と。

「どこまでお客様のことを考えて販売していた?」と、ただ一言だけ私に言いました

困った私はお客様に一言お詫びを伝え、すぐ上司に相談しました。私の販売した経緯、話した言葉、お客様の態度と言葉、すべて伝えました。でもきっと、どこか言い訳がましかったと思います。それを見抜いた上司は「どこまでお客様のことを考えて販売していた?」と、ただ一言だけ言いました。

私はその言葉に胸を打たれました。お客様のためを思って販売していた、と言ったら心のどこかで嘘をついていたような気がしました。展示品になっていた商品の残り一つが売れたらラッキー、おそらく心の奥底ではそんな気持ちが、お客様のご要望なんて全然考えていない自分勝手な考えがあったんだと思います。

それが言ってみれば適当な販売になって、結果的にお客様を怒らせてしまい、このお店でお買い物をしてくれたことが嫌な思い出になってしまったのです。それから上司はすぐお客様のところへお詫びに行き、新しい商品とぜひ交換させてくださいというところで、事は落ち着きました。

もちろんこの経緯は他の販売スタッフにも情報として共有され、再発防止に努めることになりました。その注意を促す時も、上司は私をきつく叱ることはなく、非難を周りから浴びるような言い方をするわけではありませんでした。私に言ったらのは、あの時のただ一言だけでした。

それからの私はどんなお客様に対しても、そのお客様の本当のご要望を伺えるような姿勢をもち、こちらが対応できることについては誠意を込めて物事をお伝えするようになりました。上司のたった一言で、大きく変わりました。私の最初の上司は、本当にかっこいい人です。